大學(xué)からの合格通知をついに手にした張新文さんは、眉をひそめ、一晩悩みぬいた。

それは2012年7月のことだった。學(xué)校に上がったのがやや遅かった張さんは、その年すでに20歳になっていた。彼が手にした合格通知は、「家は貧しくても、勉強(qiáng)することはできる」ということを証明していた。

とはいえ、大學(xué)進(jìn)學(xué)は彼にとって頭を悩ませる出來(lái)事でもあった。父親は病気がちで、一家の生計(jì)を支えているのは母親の稼ぎだけ。張さんは自分を高校まで進(jìn)學(xué)させてくれるために、家族はすでに相當(dāng)無(wú)理をしていたことを十分承知していた。そのため、彼は出稼ぎに出るべきか、それとも大學(xué)進(jìn)學(xué)すべきか悩んだ。

張さんが、「僕が出稼ぎに出れば、來(lái)年からうちの暮らしはずっと楽になると思う」と落ち著いた口調(diào)で自分が出した結(jié)論を両親に話すと、3人の間に長(zhǎng)い間沈黙の時(shí)が流れた。

その日、母親は仕事に出かけなかった。そして、「私らは一生貧しいままだけど、だからって一生このままビクビクしてちゃダメだよ！」と張さんを説得にかかった。なかでも張さんが最も印象に殘っている母親の一言は、「全てを投げうってでもお前を大學(xué)に行かせてあげるから！」だった。母親は文盲だが、母親が語(yǔ)る言葉からは、傈僳族（少數(shù)民族の一つ。リス族）特有の、何事にも屈しない強(qiáng)さがにじみ出ていた。

大學(xué)に進(jìn)學(xué)するには、より多くの支出を伴うことを意味する。一家は、學(xué)費(fèi)をどこから捻出するか考え始めた。ブタを売ればいくばくかの収入は得られる。親戚からのご祝儀も1千元（1元は約15.8円）ほどにはなった。しかしいくら計(jì)算し、色々と考えたところでやはり足りそうにない。萬(wàn)事休すかと思われたその時(shí)、村のグループリーダーである張建軍さんがいい知らせを持ってきてくれた。大學(xué)に合格すれば、県の民生局から2千元の資金援助を得られるのだという。

この2千元は、張さんにとってまさに「干天の慈雨」となった。當(dāng)時(shí)維西県では、多くの貧困家庭の子弟がこの支援金を手にして、山を出て進(jìn)學(xué)した。2019年末の時(shí)點(diǎn)で、中國(guó)雲(yún)南省迪慶蔵（デチェン?チベット）族自治州維西県が資金援助を行った貧困家庭出身で大學(xué)?高等學(xué)校に進(jìn)學(xué)した學(xué)生は、累計(jì)1631人に達(dá)し、「必要があれば可能な限り助ける」ことを?qū)g現(xiàn)した。

2012年8月末、張さんはついに大學(xué)の正門(mén)前に立った。彼が維西大山を出たのはこれが初めてだったが、期待に値する未來(lái)への扉はすでに開(kāi)かれていることを彼は実感していた。家族にかかる負(fù)擔(dān)を最小限に抑えるため、張さんは休みになるとすぐにアルバイトに精を出した。こうして、一家の暮らしぶりは次第に良くなり、3年間の大學(xué)生活は瞬く間に過(guò)ぎていった。

2015年、張さんは、「學(xué)校での代理教員の仕事に興味はありますか？」という維西県にある中學(xué)?高校の教科擔(dān)任からの電話を受けた。卒業(yè)を控え就活中だった張さんの心が少し揺れた。その後、張さんは故郷で代理教員として働くことになった。2017年には正規(guī)教員になるためのテストに合格、みごと正規(guī)教員になった。安定した収入を得られることになり、張さん一家は、同年、政策規(guī)定により貧困からの脫卻を果たした。

白済汛郷中心完全小學(xué)校に通う生徒のほとんどはリス族の子供たちで、就學(xué)前の基礎(chǔ)教育が総じて劣っており、僻地の山村に住む子供の中は、入學(xué)時(shí)に中國(guó)語(yǔ)の標(biāo)準(zhǔn)語(yǔ)である「普通語(yǔ)」を理解できない子供すらいた。子供たちにより効果的に知識(shí)を授けようと、張さんはまず普通語(yǔ)で話した後、リス語(yǔ)に訳して子供たちに話した。「私が最初に擔(dān)當(dāng)した子供たちはすでに4年生になった。彼らの話す普通語(yǔ)は、今では私よりずっと標(biāo)準(zhǔn)的。教育は自分自身を変えるだけではなく、この山岳地帯全體を変えつつある」と張さんは語(yǔ)った。

校內(nèi)の環(huán)境も日に日に良くなり、周?chē)欷瓮扭沃肖摔?、大學(xué)生や院生がますます増えてきている。子供たちはインターネットを利用し始め、大山の外の世界に対してより多くの期待を抱いている。張さんも、將來(lái)に対して自信をみなぎらせている。

晝休みの前、廊下の一角にある図書(shū)コーナーで本を読んでいた數(shù)人の子供たちは、張さんを目にすると、彼を引き留めあれこれ質(zhì)問(wèn)した。張さんはそのままそこに腰を下ろすと、子供たちと一緒にある物語(yǔ)を読み始めた?！该銖?qiáng)が好きな子供たちの心は、この大山でも阻むことはできない」と張さんは感慨深げに話した。（編集KM）

「人民網(wǎng)日本語(yǔ)版」2020年11月20日