「料理の嫌いな料理人」。そう自分を表現(xiàn)するのは、「モダン割烹」を謳うレストランの料理長(zhǎng)、長(zhǎng)瀬龍?jiān)栅丹螅?4）だ。その言葉とは裏腹に、長(zhǎng)瀬さんの料理は丁寧な仕事と斬新なアイデアで客の目と舌を喜ばせ、唸らせる。北京に來(lái)て6年目。中國(guó)の食通たちと日々向き合う長(zhǎng)瀬さんを取材した。

數(shù)少ない日本人の「黒珍珠」獲得料理人 

長(zhǎng)瀬さんは日本の岐阜県飛騨高山の出身。結(jié)納屋を営む家に生まれ、伝統(tǒng)文化の色濃い環(huán)境で育った。料理人を志したのは高校卒業(yè)後。京都の老舗料亭「美濃吉」で修業(yè)した。生來(lái)の器用さで若くして頭角を現(xiàn)し、2008年に北京支店に派遣され、3年間北京で働いた。帰國(guó)後、副調(diào)理長(zhǎng)として従事。料理人になって8年目に同店を離れ、西洋料理レストランの店長(zhǎng)兼料理長(zhǎng)などを経て、2019年に再度北京に活躍の場(chǎng)を移し、モダン割烹レストランの料理長(zhǎng)に就任した。同店は中國(guó)の口コミサイト?大衆(zhòng)點(diǎn)評(píng)網(wǎng)が展開(kāi)するレストラン格付けシステム「黒珍珠」（ブラックパール）で、ダイヤモンドを1つ獲得している。長(zhǎng)瀬さんは「黒珍珠」に選ばれた數(shù)少ない日本人料理人の一人であり、食をテーマにした中國(guó)のドキュメンタリー「風(fēng)味人間」にも出演している。

長(zhǎng)瀬さんが最初に中國(guó)で働くきっかけは勤めていた料亭からの派遣だったが、2度目は自分の意志で北京に來(lái)ることを決めた。理由は「（最初の時(shí)に）すごく活気がある街だなと思った」から。「日本に戻って何年間か仕事をしていたが、やはりもう1回海外に出たい、日本ではない別のところで挑戦してみたいと思った時(shí)に、一番接點(diǎn)が多かったのが中國(guó)だったので、もう1回來(lái)たい！」と思ったのだという。

中國(guó)語(yǔ)はそれほど堪能ではないが、言葉が分からない分「スリルはありますね」と笑い、言葉の不自由さもゲーム感覚で楽しんでいる。そして、「日本では味わえない刺激が多いので、食材に関しても、人に関しても、文化が違うので、そこはいい刺激になって、中國(guó)に來(lái)てよかったなあと思います」と語(yǔ)った。

ほかにはない料理を作りたい

長(zhǎng)瀬さんが提供する料理は完全な創(chuàng)作料理だ。月替わりのコース料理で、メニューはすべて長(zhǎng)瀬さん自身が新しく考案する。長(zhǎng)瀬さんの創(chuàng)り出す料理は、食材の組み合わせ、色遣い、盛り付け、料理を出す時(shí)のプレゼンテーションなどに工夫があり、実に多彩だ。日本料理をベースにしながらも、西洋料理などのエッセンスも感じさせ、見(jiàn)た目も味も変化に富んでいる。

長(zhǎng)瀬さんに日本料理とは何かという質(zhì)問(wèn)をぶつけてみると、「それぞれの國(guó)で美味しいものはたくさんあるし、調(diào)理法もいろいろあると思うけれど、その伝統(tǒng)を守りながら、新しいものを取り入れてやっていくのが現(xiàn)代日本料理だと思う」という答えが返ってきた。中國(guó)人の客の中には、ネットなどの情報(bào)で勉強(qiáng)してくる人もいて、長(zhǎng)瀬さんの料理を『これは日本料理じゃない』とか『これは割烹の料理じゃない』などと言う人もいるという。それに対して長(zhǎng)瀬さんは、「その人の記憶に殘っている料理は、テレビや雑誌で見(jiàn)た、あるいは日本に行って食べたもので、それが完成形だと思っているのだと思う。でもそれは完成形ではなくて、完成に至るまでの道のりでしかないと僕は思う。中華の食材も取り入れたり、フレンチなど洋食の手法も取り入れたりしながら、ほかにはない日本料理を出したいと思って作っている」と語(yǔ)った。

長(zhǎng)瀬さんがこの日作ってくれたのは、中國(guó)で春から初夏にかけて食べられるニセアカシア（俗稱はアカシア）の花を使った創(chuàng)作料理。旬の魚(yú)であるサクラダイの炙り焼きをメインにした出汁茶漬けで、仕上げに素?fù)Pげしたニセアカシアの花をあしらい、食感を楽しむ形で提供した。ニセアカシアの花を使うのは初めてだという長(zhǎng)瀬さん?！溉毡兢扦猊ⅴ伐ⅳ位à悉瑜长伽椁欷皮い郡瑜Δ恰⒔窕厥工Δ摔ⅳ郡盲匹庭氓趣钦{(diào)べたらすぐたくさん出てきた。僕は知らなかったけれど、いろんな地域で食べられていることを?qū)g感した」と言う。中國(guó)での新たな食材との出會(huì)いは、長(zhǎng)瀬さんの料理の世界を広げている。

長(zhǎng)瀬さんは料理をするにあたって、「人一倍命に感謝して従事している」と言う。そんな長(zhǎng)瀬さんがメニューの考案や調(diào)理の際に大切にしているのは、「命を大事に、いかに使い切るか」ということ。取材の際に出してくれた出汁茶漬けにも、唐揚(yáng)げにしたサクラダイの皮が使われていた。

中國(guó)の食通と食材に向き合う

そんな長(zhǎng)瀬さんだが、中國(guó)に來(lái)た當(dāng)初はメニュー作りや調(diào)理で苦労することもあったという。中國(guó)の野菜は「野性味がある」ため、使いこなすのに「3年かかった」と笑う。同じ種類の野菜でも味が違うため、メニュー開(kāi)発も一から構(gòu)成しなければならないという。例えばジャガイモを使う料理では、中國(guó)のものだと若干風(fēng)味が弱いので、サトイモに変えたり、出汁を少し濃い目に作って味を含ませたりなど、試行錯(cuò)誤を繰り返した。

中國(guó)料理については、「油をすごく使う。いろんな種類の油があって、油がないと完成しない料理が多い」という印象を抱いている。ただ、そうした料理を食べ慣れている中國(guó)人客に合わせることはなく、むしろ「意識(shí)して油はあまり使わないようにしている。てんぷらも今はもうコースに入れていない」という。また、中國(guó)人の女性客の中には、「油っこいものは絶対食べない、大トロは食べない、てんぷらは無(wú)しにして」といった要望がある人も多く、健康志向の高まりを感じるという。

楽しみは仕事の後の一杯

「趣味は特にない」という長(zhǎng)瀬さんの楽しみは、仕事が終わった後にふらりとお酒を飲みに行くこと?！袱皮蝻嫟啶绕￥欷丹wぶ。それに寂しがり屋なので、行きつけの居酒屋に行って、常連客の人と會(huì)って會(huì)話をすることで、ストレスの発散ができて、次の日リフレッシュできる」という。ただ、誰(shuí)かと誘い合わせて飲みに行くことはない?！感肖盲肯趣扦郡蓼郡抟痪wになった人との會(huì)話が楽しいから」と話すが、行きつけの店ではよく會(huì)う飲み友達(dá)と話が弾み、いつの間にか杯を重ねてしまうこともある。そんな時(shí)には、仕事場(chǎng)ではなかなか見(jiàn)せない自然な笑顔が弾ける。

お酒がつなぐ縁もある。「日本にいる時(shí)はずっとウイスキーだったけれど、中國(guó)に來(lái)てからいろいろ飲ませてもらった。お酒に詳しい方が周りにいっぱいいるので、ワインなどの勉強(qiáng)もさせてもらっている。お酒があって人とのつながりができるというのもあるので、そこがいいところかなあと思います」と笑う。

「料理の嫌いな料理人」

長(zhǎng)瀬さんは、家ではまったく料理しないという?！弗螭去栅蚯肖晏妞à郡い韦恰⒘侠恧鲜耸聢?chǎng)で、家に帰ったらプライベート。あえて家では料理しないようにしている」。とはいえ、料理のことが頭から離れているわけではなく、「頭の中で料理する感じですね」と言うように、家にいる間もアイデアを模索するという。メニューを作る際には、料理の本やレシピ本、寫(xiě)真集は見(jiàn)ないようにしているという。「ほかの人の料理を見(jiàn)すぎても真似にしかならないので、できるだけ自分で一から考えるようにしている」という言葉に、常に新しいものを作り出そうという気概がのぞく。

ところで、「料理の嫌いな料理人」とはどういうことだろう。詳しく聞いてみると、実はほかにやりたいことがあったが、それを斷念せざるを得なくて料理の道に入ったのだという。そしていざ働き始めてみたら、「地獄のようにしんどい修行」が待っていた。やめたいと思ったが、実家の近所の料亭からの紹介だった手前、やめるにやめられず、「とりあえず3年、5年頑張ってみようかな」と踏ん張った。今では、「仕事でやっているからには、ほかの料理人には負(fù)けたくないし、なあなあに仕事はしたくない」ときっぱり言い切る。そしてさらに、「ほかの料理人よりは、作ることに対しての真面目度は高いんじゃないかなとは思う」と続けた?！噶侠恧蜗婴い柿侠砣恕工趣いψ约涸u(píng)価とは裏腹に、その言葉にはプロの料理人としての強(qiáng)い矜持がにじんでいた。（文/勝又あや子）

「人民網(wǎng)日本語(yǔ)版」2022年5月12日